「子どもがいるとFIREは無理なのでは?」——30〜40代の会社員から、よく聞く悩みです。たしかに教育費は、住宅・老後資金と並んで「人生の三大支出」と呼ばれるほど大きなお金です。しかし、教育費は「いつ・いくら必要になるか」がかなり正確に読める支出でもあります。時期と金額が見えている支出は、計画さえ立てれば怖いものではありません。
この記事では、教育費の目安、国の支援制度で実際にどれくらいカバーできるのか、そして会社員がFIREを目指しながら教育費を準備する具体的な方法を整理します。
教育費はいくらかかる?まずは全体像をつかもう
文部科学省の「子供の学習費調査(令和3年度)」によると、幼稚園から高校までの15年間にかかる学習費(授業料のほか、塾・習い事・給食費なども含む)の総額は、おおよそ次のとおりです。
- すべて公立:約574万円
- すべて私立:約1,838万円
さらに大学に進学すると、国立大学なら入学金と4年間の授業料で約243万円(入学金28万2,000円+授業料年53万5,800円×4年)が標準的な目安です。私立大学は学部によって差が大きく、文系で400万円前後、理系では500万円を超えることも珍しくありません。自宅外から通う場合は、これに家賃や仕送りが加わります。
数字だけ見ると身構えてしまいますが、ここで大事なのは「この金額を一度に払うわけではない」という点です。幼稚園から高校までの費用は、15年かけて毎月の家計から少しずつ出ていくもの。本当にまとまったお金が必要になるのは、主に大学の入学前後です。
教育費は「毎月の生活費」と「大学資金」に分けて考える
教育費を一つの大きな塊として考えると、どうしても不安になります。そこでおすすめなのが、次の2つに分けて考える方法です。
- 毎月の生活費として払う教育費:保育料、給食費、塾・習い事代など。家計の「支出」として毎月の収入から払う
- まとめて準備する教育費:主に大学の入学金・授業料。子どもが18歳になる時点を「期限」として計画的に積み立てる
1つ目は、FIREの計算でいう「毎月の支出」の一部です。家計全体の貯蓄率の中で管理していきます。貯蓄率の考え方はFIREまでの年数は「貯蓄率」で決まるで詳しく解説しています。
2つ目の大学資金は、「18年後に、子ども1人あたり何百万円」という期限付きの目標です。ここが教育費準備の本丸になります。
国の支援で実はかなりカバーできる
教育費を考えるとき、見落とされがちなのが国の支援制度です。ここ数年で、子育て世帯への支援は大きく拡充されています。
児童手当だけで約234万円
2024年10月から児童手当が拡充され、所得制限が撤廃、支給期間も高校生年代まで延長されました。支給額は、3歳未満が月1万5,000円、3歳から高校生年代までが月1万円(第3子以降は月3万円)です。
第1子・第2子の場合、0歳から高校卒業までに受け取る総額は約234万円(1万5,000円×36か月+1万円×180か月)になります。これは国立大学4年間の学費とほぼ同じ金額です。つまり、児童手当を使わずにそのまま貯めておくだけで、大学資金の大部分が準備できる計算です。
ポイントは、児童手当を普段の生活費の口座に入れたままにしないこと。受取口座を家計用とは別にしておくか、振り込まれたらすぐに教育資金用の口座や投資に回す仕組みを作っておくと、「気づいたら使っていた」を防げます。
高校の授業料も支援が広がっている
高校の授業料についても、国の就学支援金制度が段階的に拡充され、公立高校は所得にかかわらず授業料が実質無償化されました。私立高校についても支援額の引き上げが進められています。制度は年度ごとに見直されることがあるため、子どもが高校に進学する時期には、文部科学省やお住まいの自治体の最新情報を確認してください。
学資保険より「新NISA+預金」で準備する
教育資金の準備というと、昔から「学資保険」が定番でした。しかし、現在の低い返戻率を考えると、FIREを目指す会社員にとっての優先度は高くありません。学資保険は払った保険料に対して戻ってくるお金が少しだけ増える程度で、途中解約すると元本割れすることもあります。保険の考え方については会社員がFIREを目指すなら生命保険は本当に必要?もあわせて参考にしてください。
代わりに考えたいのが、新NISAと預金の組み合わせです。ただし、教育費は「使う時期が決まっているお金」なので、老後資金と同じ感覚ですべてを株式に投じるのはおすすめしません。目安として、次のように時期で分けて考えると安心です。
- 子どもが0〜10歳ごろ:使うまで10年以上あるため、新NISAでインデックス投資信託を積み立てる選択肢がある
- 子どもが10〜15歳ごろ:大学入学までの年数が短くなってきたら、少しずつ預金に移して「必要額を確保していく」
- 子どもが15歳以降:入学金・初年度授業料にあたる金額は、値動きのない預金で確保しておく
投資信託は元本保証ではなく、暴落のタイミングと入学時期が重なる可能性もゼロではありません。「使う時期が近づいたら、少しずつ確実なお金に置き換える」のが、教育費を投資で準備するときの基本です。預金の置き場所は、金利が比較的高く、スマホで管理しやすいネット銀行が第一候補になります。生活防衛資金と口座を分けておくと、お金の役割がはっきりして管理が楽になります。毎月の積立額の決め方は新NISAは毎月いくら積み立てる?年代別シミュレーションも参考になります。
教育費とFIREを両立させる3つの考え方
1. 教育費は「FIRE資産」と別の財布で管理する
教育資金と自分たちの老後・FIRE資金を同じ口座で管理していると、「どこまでが使ってよいお金か」が分からなくなります。新NISAは1人1口座なので、夫婦それぞれの口座の中で「教育資金分」を決めておく、または預金口座を分けるなど、お金の役割を分けて見える化しておきましょう。
2. FIREの目標時期を「子どもの進学」と重ねて考える
完全にリタイアするタイミングが、大学の学費がかかる時期と重なると、資産の取り崩しが一気に増えてしまいます。たとえば、子どもが大学を卒業するまでは働く時間を減らしつつ収入を得る「サイドFIRE」を選ぶなど、段階的にFIREに近づく考え方も有効です。
3. 「親がすべて出す」以外の選択肢も家族で話し合う
教育費は親の愛情の大きさで決めるものではありません。どこまで親が負担し、どこからは子ども自身がアルバイトや奨学金で担うのか。子どもが中学生くらいになったら、家庭の方針として話し合っておくと、親の老後資金を削りすぎることを防げます。親の老後資金が足りなくなれば、将来その負担は子どもにのしかかることも忘れないでおきたいところです。
確定申告で家計の「取りこぼし」を防ぐ
子育て世帯は、医療費やふるさと納税など、税金を取り戻せる場面が意外と多いものです。確定申告は一部の人を除いて「しなければならない義務」ではありませんが、払い過ぎた所得税・住民税を取り戻せる「権利」です。子どもの通院や歯科矯正などで家族の医療費がかさんだ年は、医療費控除の対象になるか確認してみましょう。取り戻したお金を教育資金に回せば、その分だけ準備が楽になります。
まとめ:教育費は「読める支出」。早めの計画で怖くない
- 教育費は総額こそ大きいものの、時期と金額が読める支出
- 「毎月の生活費として払う分」と「大学資金としてまとめて準備する分」に分けて考える
- 児童手当は総額約234万円。使わずに貯めれば国立大学の学費相当になる
- 学資保険より、新NISAと預金の組み合わせで準備。使う時期が近づいたら預金に移す
- FIRE資産と教育資金は別の財布で管理し、リタイア時期は進学時期とあわせて考える
子どもがいてもFIREをあきらめる必要はありません。大切なのは、教育費を「漠然とした不安」のままにせず、金額と時期を書き出して計画に落とし込むことです。まずは、お子さんが18歳になる年と、それまでに準備したい金額を家族で確認するところから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。投資信託は元本が保証されていません。制度の内容は変更される場合があるため、最新情報は公式サイトでご確認ください。
