会社員がFIREを目指すなら生命保険は本当に必要?見直すべき保障の考え方

資産運用

「独身でも生命保険に入るべき?」「子どもが生まれたから保険を見直したほうがいい?」——FIREを目指して資産形成を進めていると、こうした保険の悩みに一度はぶつかります。保険料は毎月の固定費として長期間積み重なるため、資産形成のスピードに直結する重要な項目です。この記事では、会社員がすでに持っている公的な保障を踏まえたうえで、FIREを目指す人がどう生命保険と向き合うべきかを整理します。

なお、いざという時の備えという意味では、保険より先に生活防衛資金を確保しておくことが土台になります。まずはそちらを固めたうえで、この記事を読み進めてください。

そもそも生命保険は何のためにある?

生命保険の本来の役割は「自分が万が一の事態になったとき、経済的に困る人がいる場合に、その人たちの生活を守ること」です。逆に言えば、自分に万が一のことがあっても経済的に困る人がいないなら、生命保険の必要性は大きく下がります

独身で扶養家族がいない会社員の場合、死亡保障としての生命保険はそもそも不要なケースが多くあります。それでも「なんとなく不安だから」「社会人になったら入るものだと思っていたから」という理由で、内容をよく理解しないまま保険料を払い続けている人は少なくありません。

会社員がすでに持っている公的な保障

民間の保険を検討する前に、会社員には次のような公的保障がすでに用意されていることを知っておく必要があります。これらを踏まえずに保険に入ると、保障が重複して保険料を払いすぎることになりがちです。

高額療養費制度
医療費が高額になっても、所得に応じた自己負担限度額を超えた分は払い戻される制度です。一般的な会社員の年収であれば、月々の自己負担は概ね8万円台〜10万円前後(所得区分による)に収まるよう設計されています。「入院・手術で数百万円かかったらどうしよう」という不安の多くは、この制度でかなりカバーされます。

傷病手当金
病気やケガで働けなくなり給与が支払われない場合、健康保険から標準報酬日額の3分の2程度が最長1年6ヶ月支給されます。就業不能保険を検討する際は、この傷病手当金でどこまで生活が維持できるかを先に計算しておくべきです。

遺族年金
会社員(厚生年金加入者)が亡くなった場合、一定の要件を満たす配偶者や子には遺族厚生年金・遺族基礎年金が支給されます。子育て中の家庭であれば、この遺族年金の見込み額を把握したうえで、不足分だけを民間の死亡保険で補うという考え方が合理的です。

保険が必要になりやすいケース・不要になりやすいケース

一律に「保険は不要」と言い切れるものではなく、ライフステージによって必要性は変わります。目安として整理すると次のようになります。

保険の必要性が低いケース

  • 独身で扶養家族がいない
  • 共働きで、どちらかが欠けても生活防衛資金と遺族年金である程度生活を維持できる
  • 資産形成が進み、金融資産が万が一の際の保障として機能する水準に達している

保険の必要性が相対的に高いケース

  • 専業(または収入の低い)配偶者と、小さい子どもがいる
  • 住宅ローンを組んでいて団体信用生命保険(団信)でカバーされる範囲が限定的
  • 資産形成の初期段階で、金融資産がまだ少なく遺族年金だけでは不足する

「不足する保障額だけを、掛け捨ての定期保険や収入保障保険で安く確保する」というのが、資産形成を優先するなら基本的な考え方になります。貯蓄性のある保険(終身保険・学資保険など)は、保障と貯蓄・運用を一つの商品に混ぜてしまっているぶん、それぞれを別々に(掛け捨て保険+新NISA)持つよりも割高になりやすい点に注意が必要です。

医療保険・がん保険も本当に必要か

生命保険と並んでよく検討されるのが、医療保険やがん保険です。「がんになったら数百万円かかる」というイメージから加入する人が多い保険ですが、ここでも前提として高額療養費制度があることを忘れてはいけません。

高額療養費制度を使えば、入院や手術を含む治療費の自己負担は月あたり一定額(所得区分に応じて概ね8万円台〜)に収まります。差額ベッド代や先進医療の技術料など、制度の対象外になる費用はあるものの、それらのために毎月数千円〜1万円前後の保険料を長期間払い続けるかどうかは、生活防衛資金の厚みや金融資産の状況次第で判断が分かれるところです。

資産形成の初期段階でどうしても不安が残る場合は、貯蓄性のある医療保険ではなく、保険料の安い掛け捨て型を短期間だけ利用し、資産が増えるにつれて解約するという選択肢も検討に値します。

住宅ローンを組むなら団信も保障の一部

住宅ローンを利用している(利用予定の)会社員は、団体信用生命保険(団信)の存在も忘れてはいけません。団信に加入していれば、契約者に万が一のことがあった場合、住宅ローンの残債が保険金で完済される仕組みになっています。

つまり、住宅ローンを組んでいる家庭では「団信によって住居費という大きな支出リスクがすでにカバーされている」状態です。この点を踏まえずに死亡保険の保障額を計算すると、保障が重複して払いすぎになります。団信の保険料は金利に含まれているという考え方や、住宅ローンをどう資産形成に組み込むかについては住宅ローンの繰上返済と投資、FIREを目指すならどっちを優先すべき?で詳しく解説しています。

資産形成が進むほど、保険の必要性は下がっていく

FIREを目指すプロセスそのものが、実は保険の代替になっていきます。金融資産が積み上がるほど、万が一の際に家族が生活に困る可能性は下がるためです。保有資産が数千万円規模になれば、多くの死亡保障はほとんど役割を終えると言ってよいでしょう。

そのため、保険は「一度入ったら見直さないもの」ではなく、資産状況やライフステージの変化に合わせて定期的に見直すべきものと捉えるのが資産形成の観点では合理的です。子どもの独立、住宅ローンの完済、金融資産の増加といった節目ごとに、必要保障額を再計算する習慣を持つとよいでしょう。

FIRE後の医療費・保障はどう考えるか

会社を辞めてFIREを達成した後は、傷病手当金のような会社員特有の保障がなくなる点には注意が必要です。一方で高額療養費制度は国民健康保険に加入していても利用できるため、大きな医療費リスクへの備えとしては引き続き機能します。FIRE後の社会保険や税金の扱いについてはFIRE後の健康保険・年金・税金はどうなる?で詳しくまとめているので、あわせて確認しておくと安心です。

傷病手当金がなくなる分、FIRE後の生活防衛資金は現役時代よりも厚めに確保しておく、あるいは資産の取り崩しペースに余裕を持たせておく、といった形でカバーするのが現実的な備え方です。

まとめ

生命保険は「なんとなく不安だから入る」ものではなく、公的保障(高額療養費制度・傷病手当金・遺族年金)や団信、そして自分の金融資産の状況を踏まえたうえで、不足分だけを合理的に補うものです。特に資産形成を優先したいFIRE志向の会社員にとって、過剰な保険料は複利の効果を削る大きな要因になります。

今の保険が「何のリスクに、いくらの保障で備えているのか」を一度棚卸しし、公的保障と照らし合わせて過不足を確認してみましょう。保障が重複している部分を整理できれば、その分を新NISAなどの資産形成に回すことができます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の保険商品や運用商品の勧誘・推奨を行うものではありません。保険の見直しにあたっては、ご自身の家族構成やライフプランに応じて、必要に応じて専門家にもご相談ください。

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